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「ねえ、覚えてる?」
人通りのない裏道を歩きながら、ギラギラとした太陽に目を細めていると突然後ろから声を掛けられた。
驚いて振り返るとそこには小首を傾げた少女が、笑みを浮かべながら小さな両手で白いクマのぬいぐるみを大事そうに抱えていた。
袖口と裾に白地のレースがついた膝丈のピンク色のワンピースを着て、胸元まである栗色の髪には天使の輪ができている。
まるで絵本から飛び出してきたかのような、典型的な「女の子像」に記憶の奥深くの水面が微かに波うつ感覚がした。
「ねえ、私のこと」
「知らない!」
と、拒否するように走り出したのは女の子らしい姿と一人佇む姿に不快感と不気味さを覚えたからだ。
俺は後ろを振り返ることもせずに、そのまま走り続けるとバイト先のバックヤードへと飛び込んだ。
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