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さやさやと流れる風が心地良い。 目を閉じればいつだって、僕の心を澄み渡らせてくれるのは晴瑠の笑顔だ。 この場所で僕は、空を見上げて過ごす。 今日は空も湖も風の香りも穏やかだから、晴瑠もきっと心穏やかに過ごせているのだろう。 晴瑠が泣いている日は、僕が今寝転んでいるこの辺りまで湖に沈んでしまう。そんな時は、風になって晴瑠に逢いに行く。泣いている晴瑠に、「そんなに泣かなくてもいいんだよ」と伝えにいくのだ。 晴瑠を想う度に増えていく青い花。 大きく息を吸い込めば、晴瑠の香りがする。それだけで、僕はとても満たされた気持ちになる。 晴瑠。 僕は、いつだって傍にいる。 いつだって、きみに逢いにいける。 淋しくなんてない。 短いとか、長いとか、そんなのは関係ないんだ。 きみに逢えたことで僕の一生は、とても美しく輝いていたから。 きみと過ごした時間、その間僕は確かに生きているって、心から思うことが出来たから。 ずっと愛していると伝えたこと。 いつだってその気持ちには、1つの曇りだってないんだ。 ね、晴瑠。 きみがいつか幸せな一生を終え、永い眠りについたら、もう一度ここで逢おう。 長い待ち合わせだったね、って一緒に笑おう。 碧惟が来るまでの間、少しだけ。 僕はきみと、世界中を旅するんだ。 その日まで、僕はここでずっと、きみを想う。 きみの幸せを願う。 それだけで、僕はとても満たされる。 いつだってきみを抱き締めているような、そんな気持ちになれる。 雨の日も晴れの日も。 泣いたり、笑ったりするきみが、ずっと幸せでありますように。 きみの幸せが、ずっとずっと続きますように。 僕は穏やかな気持ちで目を閉じる。 愛しい笑顔みたいに優しい風が、頬を撫でた。
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