第38話 明かされる契約内容

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「リメイクして夏用のスカートにしてもいいし、シャツにしてもいい。リゾートワンピースに仕立ててもいいかなって。うん、そうだな。月子と旅行に行きたいな」 「今、帰ってきたばかりなのにですか?」 「月子とだよ」 いつ着るの?と思ったけど、これは天清さんが私に『旅行に行こうよ』という遠回しのお誘いだったらしい。 「きっと二人で旅行に行ったら楽しいよ?俺がいなくて寂しくなかった?」 「そっ、それはっ……寂しかったですけど、仕事ですし」 なんとなく、気恥ずかしくて目を逸らして布を見ているふりをした。 「じゃあ、次は一緒に月子も行こうよ」 「そっ、そうですねっ……。近くならっ!」 布からは外国の不思議な香りがして、私も近場の旅行ならばと思わなくもなかった。 それにお土産を見ていると、天清さんがどこへ行って何を見てきたのだろうと気になった。 一緒に同じものを見たかったかな―――と少しだけ後悔した。 ほんの少しだけど。 返事はあくまで保留にしておこう。 天清さんのことだ。 うっかり『旅行に行きたいです』なんて、言った日にはアフリカや砂漠のど真ん中に連れて行かれるかもしれない。
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