ケース7️⃣ 前世追憶

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陽が沈んでいく大通りを、グレーメタリック色のスープラが走っていく。 運転する江戸川と、助手席で怖い顔した松田。 つい先程、昌也を家まで送り届けた後だった。 「松田さん。何かあったんですか?」 江戸川が、ようやく切り出して尋ねる。 白い無地のTシャツを着た松田は、汗がひいた様子だった。 「ああ・・。お前も知ってる通り、今回の捜査は難航している。」 「確かにそうですね。」 江戸川が、相槌を打つ。 松田は、ゆっくりと深刻そうに話しはじめた。 「それで・・、俺なりに、色々なツテを使って調査し、裏情報なども入るようにしていたんだ。」 「そんな、いつの間に⁈」 江戸川が、驚きの表情で言う。 「まあだが、それぞれ集めた情報が確証得られないと、お前にもちゃんと話せないからな。それで、話さないでいたんだが。」 助手席の松田は、遠くの景色を見るようにしながら説明した。 「なるほど。そうだったんですね。」 江戸川は、それに納得する。 「さっき電話がかかってきた相手は、ブラジルにいる俺の従兄弟だ。ダグラスっていうんだが、元特殊部隊の諜報員だったヤツなんだ。六ヵ国語も、ペラペラと話せる。」 淡々と話していく松田だったが、江戸川には驚くべき内容だ。 「従兄弟で、元特殊部隊・・ですかぁ。凄いですね。しかも、今回の捜査で、そんな海外にまで調査の手を伸ばしていたなんて、ビックリですよ。」 運転中の江戸川は、身ぶり手振りで話す。 「お前も知ってる通り、今回事件の真相を一番知っているであろう人物が、あの『カルマの館』と、山の中に別荘をもっていた、四姉妹たちなんだ。行方不明のその四姉妹について、色々調べる必要があった。」 「それは、警視庁でも捜査したり、四姉妹を捜索してはいるんですが。なかなか情報を掴めずにいる状況ですよね。」 江戸川が、チラリと松田を見て言った。 「そうだ。だが、やっとパズルのように、一枚一枚裏情報が集まり、かなり真相に近づいてきた。」 「え〜? そうなんですか? 何かハッキリと分かった情報なら、教えてください。」 必死に江戸川は求める。 「四姉妹は、アメリカ人。3年前に日本に来たんだ。どうやら金まわりも結構イイみたいで、棲家もすぐに変えているようだ。移動に使っている車のナンバーはおさえたから、いずれ確保出来るだろう。」 「そうなんですね。あの四姉妹、神出鬼没な動きをしてますから、なかなか確保できませんよね。」 車内で、確信に迫る情報のやり取りが交わされていった。 更に、松田が話を続ける。 「そして俺は、ふと思い出した事があるんだ。妻と娘が殺害される少し前、妻が言ってたんだ。近所の公園で、娘に外人の女の子の友達が出来た、って。だがその頃、刑事捜査に追われていた俺は、きちんと話を聞かずに上の空《うわのそら》だった。同一人物かは分からないが、この四姉妹と関連がありそうだろ。」 「なるほど。確かにそれは、一つの手掛かりですね。」 江戸川は、収穫が得られたような顔をした。 その後、松田は少し曇った表情をする。 「ただ、あの四姉妹。どうやら、実名じゃなく、偽名を使ったりしているようだ。」 「え? そうなんですか。偽名を使うなんて、ますますクロの可能性が高いですね。」
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