鍋用闇

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 今日の夕飯、鍋にでもしようかな。  そう思って、スーパーの鍋の素コーナーにやってきた。  さて、どの味にしようかな。  ごま豆乳、キムチ、みそ、闇、鶏だし、トマト……。  うーん。迷うけど、やっぱ闇かな。  冷蔵庫の中を整理したいから、具材がけっこうカオスなことになりそうだし。  闇だったら、いちばん何入れても合うもんな。  ――ということで、ストレートタイプの【鍋用闇】を一袋、手に取った。  買ってきた【鍋用闇】を使って、夕飯の闇鍋を作った。  鍋の素って、簡単においしく鍋を作れて、ほんと便利だなあ。  特にこの【鍋用闇】が出てきてからは、しょっちゅう夕飯、鍋にしちゃってる。  以前は、鍋といったらごま豆乳派だったんだけど。  今ではなんだかんだ、五回に四回は闇をえらんでる。  いやほんと、うまいんだもん、闇鍋。 【鍋用闇】のパッケージには「まさにヤミつき!」とか書いてあるけど、見るたび「それな!」って思う。これはヤミつきになる味ですわ~。  しかし、自分で作っといて、何食ってるかようわからんなこれ。  ぐつぐつ煮えてる鍋の中、ぜんぶ真っ暗で。  いったん闇にまみれたら、具材の区別がぜんぜんつかない。  いま箸で取ったの、なんだこれ。  んー……キャベツの芯? チャーシューの切れ端? ……あ、たくあんだこれ。  たくあんはまあ、食ってみればわかる。食感とか味とかで。  たまに、口に入れても最後までなんだかわかんない具、あったりするんだよな。自分で入れた具のどれか、には違いないはずなんだが……。  まあ、いいか、なんでも。  闇味にすれば、なんだっておいしくなるもんな。
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