夏の日

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ずんずんと歩く振動が近づいてきて、押し入れの襖がずずずっと引き開けられた。私は見つからないように体をぎゅうっと小さくしたけど、すかすかの押し入れの中でそんなことしても何にもならなかった。 「なんだあ? 随分可愛いもん隠してたんだなおまえ」 膝にうずめた顔をつかまれ、無理矢理上を向かされる。おじさんのタバコ臭い息が直接顔にかかって、今度は思い切りむせ込んだ。 「まだ小便臭い小娘だよ」 お母さんはどうでもいい、って顔して枕元の煙草入れから一本取り出し、側にあるライターで火をつけた。おじさんは煙でうまく目が開けられない私の顔を舐めまわすように見ている。無精髭の生えたどす黒い顔がにたり、と歪んだ。 「おい、こいつとやらせてくれるなら五万出すぜ」 「え! 本当?!」 お母さんの顔がぱっと明るくなった。おじさんは私の全身を見回しながら相変わらずにたにたとしている。 「ああ。こいつぁなかなかの上玉じゃねえか。こんなもん持ってんならさっさと出せよ。婆ぁとやるよか若い女の方がいいに決まってんじゃねえか。おい、おまえこっち来いや」 おじさんに髪を引っ張られて無理矢理押し入れから連れ出される。痛い痛い痛いと思いながら畳の上に放り出された。やっと髪の毛から手を離したおじさんは、私の上にまたがって下半身に体重を乗せてくる。逃げたくても身動き一つとれない。お母さんを見ると目が合った。今まで見たことのないくらいきらきらとした笑顔だった。 「実花、あんたこの人の言うこと全部聞いてやりな。嫌がったりするんじゃないよ。いいね?」 満面の笑みで私に言うお母さん。私の上にまたがっているおじさんを見ると、おじさんも楽しそうに笑っていた。もう一度お母さんを見て頷くと、お母さんがおじさんに 「先払いしてもらうよ。その子処女だからね。五万じゃ安いくらいだ」 「初物か。こりゃいい買い物だぜ。おい、おまえ名前は? 歳はいくつだ?」 「ミカ。実花だよ。十四になったばかりだ」 私の代わりに答えると、お母さんはおじさんの肩に手をかけて 「ほら、先払いだって言ってるでしょ」 とせっついた。おじさんは一回私の上から下りると、脱ぎ散らかされた服の中から財布を拾って、中から紙幣をつかみ取りお母さんに渡した。お母さんがすぐに数を数えて満足そうに笑う。 「じゃあ実花、そのおじさんの言う通りにするんだよ。いいね」 おじさんがまた私の上にまたがり、Tシャツを乱暴に脱がしてきた。下着をつけていないから胸が丸見えになる。思わず両手で隠すとおじさんに両方の手首をつかまれて頭の上で押さえつけられた。 「私はベランダでタバコ吸ってるから終わったら呼んでおくれ」 「あいよ」
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