5 玉子焼き

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「さっき、半分しか食べなかったから。残ってたなって」 ワンピースの裾を握り締めながら、華夜子は恥ずかしさに耐える。 「でもよくよく考えてみたら、自分で口つけちゃってるやつだし。綺麗じゃないし。…第一、赤の他人が作ったものなんて、怪しくて食べるはずないのに。なんでいきなり、そんな事思いついちゃったんだろ。馬鹿みたい。…だからなんでもないって、言ったのに」 どうしてと、自分でも思う。 他の誰にもした事がないのに、どうしてさっきから彼に対してばかり。 たまたま垣間見てしまった、哀愁漂う彼の姿に、ほんの僅か心が動いてしまっているだけだー。 「すげー嬉しい」 華夜子の話を黙って聞いていた陸は、やがて満面の笑みを咲かせた。 「嘘だったら超へこむけど。…でももしも本当なら、すげー嬉しい」 喜びを抑える事なく表現してくる陸に、華夜子の顔はみるみる染まる。 「くれるなら喜んでもらうけど」 「…や。だからこれは私の食べかけで。だめだってば」 「俺、そういうの割と気にしないタイプ。勿論、誰のでもいいって訳じゃない」 陸に真っ直ぐ見つめられて、華夜子も惹かれ合うように、彼を見る。 「華夜子のなら全然平気。寧ろ喜んで食べる」 はっきり告げた後、陸は照れ臭そうに笑った。
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