9213人が本棚に入れています
本棚に追加
/216ページ
「はぁ、夏が始まったら忙しいぞー。三年生は追い込みの夏になるわけだからな」
「そうだよね。去年は声枯れたからね」
「そりゃそうだろうな。朝から夜まで永遠に授業だもんなー」
去年を思い出して月野君と一緒に遠い目を前方へ向ける。
夏休みは夏期講習が始まるからかなり忙しい。受験生のピリピリした雰囲気を感じながら私たちは彼らの合格のために必死だ。
まだ6月だというのに、今日は気温が高い。
そのせいで体が汗ばんでしまう。
「よーし!じゃあ早速授業の準備するか~夕方から一斉の授業だ」
「そうだね。私も頑張らないと」
塾講師用の部屋に入る。
と、同時に私の携帯電話が鞄の中で振動していた。
取り出した時には既に切れていて、名前を確認すると
「あ、」
それは、以前偶然会った元カレ、恭介の名前だった。
連絡先を消していなかったこともそうだけど、お台場でご飯を食べてそのあと…―
拓海に強引に連れられてちゃんとお礼も言えていなかった。
それに、あれが拓海だということはバレていなかったのだろうか。
今掛けなおしたい衝動に襲われるけど帰宅してからにしようと思った。
最初のコメントを投稿しよう!