序章

2/3
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
掴めないこのウズラの卵のように、理解がつるんと滑って手に取れない。 それもこれもみんな、諸悪の根源である――佐藤(さとう)(みつ)、アンタのせい。 けれどそのことは他の二人は知らないから、私だけが騒ぎ立てるわけにもいかないし、眠いし、面倒くさいし、眠いし……。 「とりあえずー、今は喉詰まったら危ないから一旦起きときなー?ほい、あーん」 そうして瞼がほとんど落ちている私の口の中に放り込まれたのは。 「!!???!?!?」 口の中がジュワァッと熱くなり、唾液の分泌が強制的に促進されるくらいに塩分濃度の濃い、梅干しだった。 「はい起きた」 満足気に微笑むその顔を涙目で睨んでから、再び八宝菜とにらめっこする。 酸っぱいのを通り越して、もはやしょっぱすぎて口の中が痛い。 早く食べて、休める所に行こう。 「しょっぱすぎて味がわからなくなったんだけど」 「ごめんごめん、でもちゃんと起きられたっしょー?」 「一生恨む」 「ありゃりゃ」 昨日のことと合わせて、絶対一生恨んでやる。 面倒くささで相殺なんてさせるもんか。 相殺されてしまいそうなのが私の怖いところではあるけれど。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!