君が思い出になる前に

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「ねぇ、アタシのこと覚えてる?」 「キミは……。誰だったかな。ええと、ダメだ。思い出せない」 「仕方ないわ。あの衝撃では。可哀想に。アナタとは、マッチングアプリで出会って今日初めて顔を合わせたのよ。これから食事に行こうと、車で向かっていたところで事故に合ってしまって……」 「逆走してきた大型ダンプと正面衝突したのは覚えているんだ。思い出せないのは、キミの顔なんだ」 「顔って、アタシは、目の前にいるじゃないの!」 「ぐちゃぐちゃなんだよ。殆ど原型をとどめていない。うっ、吐き気が……」 「吐き気をもよおしても、口を押さえることはできないわ。アナタ、首から下がないんですもの」
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