アオイくんとソラちゃん

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アオイくんとソラちゃん

全然男らしくない、とか。 生まれる性別を間違えてきた、とか。 散々言われてきたけどそんなの自分が一番分かってる。 そんな風に何度も何度も言うのなら。 いっそのこと僕は女の子に生まれてくれば良かったじゃんって思うんだよ。 身長150ちょっと。体重は軽め。痩せ過ぎではないと思う、引き締まってもいないけど。 肌は綺麗なほうなんだ。男子への褒め言葉じゃないと思うけど、よく言われる。 学生服が男女同じデザインだったら絶対間違えてたって。なんでスカートを穿いていないんだと言われても、一応男子ですからと言うしかない。 スカート、穿いてみたいなとは思うけど。 女装癖はない。ない。 まだかろうじて発症してはいない。 昔から可愛らしいものが好きだった。戦隊ヒーローとかトミカは好きだったけど。 ピンク、はそこまでだけど黄色とかオレンジとか暖かみのある色が好き。黒はまあ、似合わないでしょ。 可愛いねって言われるのは嬉しかった。だけど、親はしっかり男の子としてカッコイイ系の男児服しか着させてこなかったのは良かった、と思っている。 正直似合ってないよねと。みんなが言うのは結局カッコイイよりもなんかかわいいだし。 何より僕よりもカッコイイ子がすぐそばにいたからね。 この子の前じゃあどんなに頑張っても僕はカッコイイ男子になれないんだって思った。 ──勘違いしないでね。僕が女の子に憧れたのは僕自身物心が付いてからすぐのこと。 彼女がいたからそうなったというのはありえないし、誰も彼も決して認めない許さない。 「アオイ、おはよう!」 「あっ。おはようソラちゃん」 元気に爽やか笑顔を振りまくイケメン女子、ソラちゃん。 この前身体測定で170いったとかいかないとか。やっぱり格好いいなと、見上げながら思う。 周りがどう思うとも気にしない。僕はソラちゃんがとても格好良くて優しい人だと知っているから。 「ふふっ。アオイだけだよ、私のことちゃん付けで呼ぶの」 「ふぇ。い、いやだった?」 「ぜんっぜん! 私はそんなアオイが好きだから」 ──僕も好きだよ。大好きだ。 なんて、さらりと言えるようなイケメンタルはあるはずもなく。 照れくさくなってうつむく僕をソラちゃんは嬉しそうに撫でるんだ。 「可愛いアオイ。そのままで、いいからね」 いいの、かな……? スカートを穿いているのがソラちゃんじゃなくて僕だったら。 イケメン女子じゃなくていわるゆる理想の男子と、可愛い女の子だったら。 みんなもきっと、全然おかしくないよ素敵だねって言ってくれるのかな。
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