通りすがりの幽霊

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 マサトの存在を知ったのは高校に入学し、高校生活にもちょっと馴染んできた頃だった。背が高くて顔も良くて、女子にモテモテな男が隣のクラスにいるらしいと噂になった。名前は加納マサト。そんなスペシャルな人間と関りを持つことなんてないだろうなって思ってた。  合同体育でバレーの試合したり、学校行事で加納マサトの姿形は目撃できた。遠目に見ただけだけど、噂通りの男だった。  二年になり、その加納マサトと同じクラスになって、遠目に見てたやつと偶然隣の席になった。マサトは唐突に「海里だよね?」と呼び捨てにして話しかけてきた。なんとも人懐っこい。 「海里、めちゃ運動神経いいね」 「あ、うん。それだけが取り柄だし」  陰キャ的な返事に、マサトは「あはは」と笑った。一陣の風が吹き抜ける。絵に描いたような爽やかキャラに軽く魂を持っていかれそうになった。同じ男を相手になんて破壊力なんだろう。これはモテないはずがない。真の男前、いや爽やか好青年? の前では性別なんてものは無に等しいらしい。  そんなわけで、マサトはそのあともなにかにつけて俺に話しかけてきた。  マサトには一年から一緒の友達もいたみたいだし、人懐っこいヤツだから他のクラスメイトとも仲がいいのに、なぜか圧倒的に俺の隣にいる時間が長かったような気がする。  単純に馬が合ったからなのか……よくわからないけど、俺の隣はマサト的な当たり前があった。あったのに、いや、たぶん。マサトがその当たり前を作り出した張本人なのに、まさか大学の進路が違うなんて思いもしなかった。マサトを追いかける、なんて選択肢はありえない程の頭のいい大学で、自分たちの関係にもタイムリミットがあることを知ってしまった。  それは結構俺にとってはヘビーなことで。  終わりだと思ったせいか、進路が決定した頃から俺はマサトのことを変な意味で意識してしまうようになった。変っていうか、妙……というか。  もはや見慣れた顔面なのに、さっきみたいにやけに距離が近いと緊張してしまうし、左之助にデレデレしてるのを見ると面白くなかったり。どうってことない会話にビクビクしてしまったり、考え込んでしまったり。  改めて考えてみると、俺ってあいつのこと好きなんじゃね? と思ってしまう。まぁ、好きっちゃ好きなんだけど。友達の範疇をオーバーしちゃってるみたいな、好き?
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