その後

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その後

「ふう、良かった」  そう言って男は海を眺める。ここはすぐに海を見渡せる少し高台で、運ばれてくる風には潮の香りが混ざる。 「分祀とは言え、ここは海が見えるし海神様も満足してくれることでしょう」  鏡をそっと置き、男は二回頭を下げると、二回大きく柏手を打ち、もう一度礼をした。 「神様でも記憶喪失になるんですね」  巫女姿をした少女の声に彼は頷く。 「人間だって同じだよ。誰かから認識されて自分を確立する。実体のない神ならなおさらだ。それでも海神様が堕とし神にならなかったのは、この飴玉のおかげだよ」  堕とし神とは、神の気が陽から陰に変わり、神の力を失うことだ。そうなれば、再び神となりうることは無い。神とて『救いがない』ということなのだ。
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