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「あなたはチョコレートが好きなのですね。いつも、この喫茶店で、同じチョコレート食べています。チョコレートを好きな人は多いと思いますけど、毎日、食べるとさすがに飽きそうに思うのですが?」
私は話しましたが、返ってきたのは屈託のない微笑みでした。
どうしてそんなにチョコレートが好きなのですかと聞きたかったけど、その女性がチョコレートを食べている時の表情があまりにも綺麗で聞くことができませんでした。
私は長年、この喫茶店で仕事をしているけれど、こんなにチョコレートが好きな人を初めて見ました。
翌日、その人はまた来ました。いつもと同じ飲み物、そして、いつもと同じチョコレートを注文しました。外の景色を眺めながら、ゆっくりと、チョコレートを食べていました。
それが毎日続きました。雨が強い日も、雪の日も、顔色一つ変えず。チョコレートを食べていました。
その人は、毎日同じ物を、この喫茶店で、食べていましたが、以前に比べてだんだん体の調子が悪くなっているように見えました。
状態が良くないことに気づいて、すぐに「大丈夫ですか?」と声をかけましたが、笑顔で「大丈夫です、ありがとう」と言われました。
そんな状態でもその人はこの喫茶店に、来ない日はありませんでした。そして、いつも変わらず全く同じチョコレートを注文しました。
それから数ヶ月が経ち、ある日、その人が喫茶店に来ませんでした。いつも来る時間をだいぶ過ぎても、なかなか来ないので、いつ来るのだろうと思って、その日はずっとそわそわしていましたが、来ませんでした。
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