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今日も長袖のロンT姿の彼は袖を7分に捲って、暑そうなのに汗のひとつもかいていない。
本当に、雪って言葉が似合うひとだなぁ。と、涼し気な姿は羨望に似た気持ちさえ抱く。
彼は徐に駐車場の裏側へ向かえば、縁石に腰掛けた。
……ここで食べるんだ。
隣にハンドタオルを敷き、同じように腰を落として、袋アイスの封を切る。
きんと冷えた、さっぱりとした甘さを堪能すれば、頭痛も少しは溶けていく。
夏を孕んだアスファルトは、夜とはいえ、お尻からその熱を身体に伝える。
雪平くんは、じっくりと天を仰いでいた。
どこか食べにくそうに、人差し指と親指で棒アイスを持って。
アイスを持つ左手の人差し指には、華奢な指先とは裏腹に、少し太めのシルバーのリングが乗っていて、少し意外だ。
……何か、あるのかな。
あたしも似た様に天を仰ぐ。
街明かりに空は翳りを見せていて、ちっとも星は見えやしない。
そればかりか、あたしの目は、コンビニのブルーのライトに集る羽虫の方に釘付けだ。
生き急ぐようにぐるぐると円を描く、その様の方が気になって仕方ない。
なので自然と隣に視線を移す。
綺麗に浮き出た喉仏は飲み込む動作とともに緩やかに動く。
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