ノープラン

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ノープラン

パーポーパーポーパーポー。 サイレンの音が鳴った。やっと十分たった。五分にすればよかった。 「これは一体何事?」 突然の事で女は慌てふためいている。首に巻き付いていた髪が緩む。 助かった・・・ 。クモ達の動きもいきなりバラバラになる。 「警察を呼んでおいた。子どもがぼろ屋の下敷きになった嘘を言っておいた。と諦めた方がいい。」 再び体が自由になる。一時的な時間しのぎにしかならない。さて、こっからど うしたものか。警察が来るまでノープランなのだ。ファタは未だに顔色が悪い。 「こんなのすぐにわかるに決まってるでしょ。予めサイレン音が鳴るようにし ておいたんでしょ?警察が来たって思わせるために。でもね、少し爪が甘いの。 こんな田舎、すぐに警察がこれるわけないでしょ。なめないで頂戴。」 万事休す。どうしたものか。打つ手なし。冷や汗がダラダラと流れる。 「今度こそ本当にさようならね。」 そう言って、クモ女は再びクモの髪で僕の首を絞める。今度こそ本当にもう無 理・・・。僕の意識はぷつりと切れた・・・。 ひどい不協和音で起きた。頭が痛い。どうやら僕は気を失っていたようだ。 それにしても酷い音楽だ。音楽と言えるかどうかも怪しい。 「ああああ、うううう。」 僕の目の前で妖精達に囲まれたクモ女が苦しそうにしている。確かにひどい音 ではあるがそこまではない。 「どうなっている?」 「カイ、気がついたのか。倒れたときは心配したぞ。」 「ファタ、よかった。無事だったんだね。」 「それはこちらの台詞だ。ちょうどカイが倒れた後に仲間達が来てくれてな。 我々の音楽はあらゆる生物に作用する。人間には効果が薄いがな。」 「さて、おまえは私の仲間を傷つけた。万死に値する。」 ファタはクモ女に向かって言った。弓矢を取り出して弓を放った。 「小さいからと言って侮るなよ。我々の音楽により力を削られた上に毒が塗っ てある矢だ。助かるかは時の運だな。」 クモ女は「うう・・。」とうめきバタリと倒れた。
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