マッチングしたい

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マッチングしたい

 今日も私はいくつものマッチングアプリを渡り歩いて探している。私の理想の男性を。 「いつもこのお店、来るんですか?」 「あ、はい、まあ。わりと無難かなって」  無難って、無粋な答えね。これといった特徴のない平凡なサラリーマン風の男。そのわりにネクタイが派手だ。派手というか趣味が悪い。案内されたイタリアンレストランも実は私も来たことがある。 「どんなものがおいしいのかな、オススメ教えてください」 「あ、すいません。僕も来たの初めてで」 「じゃあこのランチセットでジェノベーゼにしようかな」  来たことあるんじゃなかったの? デートの下準備もしていないのが見え見え。仕事を午後休にして出てきたとか。真面目そうなのはいいけれど、話しがまったく進まない。 「そうっすね、じゃあ僕も同じので」  アロハシャツみたいな柄のネクタイを眺めるだけでげんなりしてくる。今日は早めに切り上げて、他のアプリで探してみようと思い直した。  特段おいしくもないとわかっているジェノベーゼが運ばれてくるまで趣味の話題でも出そうかと考えたけれど、あまりにもやる気のなさそうな男を前にして気をつかうもの嫌になる。  今回も失敗だったな。いつになったらこれぞという男性に巡り会えるのだろう。レモンの香りのする水を口にして、さっさと逃げる算段を懸命にたてていた。
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