7.あなたじゃなきゃ

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「俺、美桜と結婚するから」  突如桔平さんが、ご両親に向かってはっきりと言い放った。  声には出さなかったものの、おそらく一番驚いたのはこの私だ。  だって、結婚なんて話は……今初めて聞いたから。 「あ!……俺……」  桔平さんが体ごと私のほうに向いて、しまった!という顔をした。 「船のデッキで言うつもりだったんだ。けど、予定が狂って今になったっていうか……ごめん!」  私は本来なら、素敵な夜景をバックに、デッキでプロポーズされる予定だった、ということだろうか。  結局デッキには出ず、私が抱えていた重い話をしてしまったことで、桔平さんとしてはタイミングを逃したのかもしれない。  アタフタとあわてる桔平さんを見て、私は拍子抜けしてしまい、どう言葉をかけていいかわからずに口ごもってしまう。 「桔平、もしかして……今のがプロポーズなの?」  私たちの様子がおかしいと思ったのか、あざみさんが眉根を寄せながら桔平さんに問う。  桔平さんは右手で頭を抱えながら、そんなところだ、という感じでうなずいた。
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