2784人が本棚に入れています
本棚に追加
/949ページ
(なんであいつはこんなにも動けるんだよ……!)
燈良は沖川の行動を見て、そう思った。
沖川はこの誰もがパニックに陥ってしまう絶望的な状況でも、仲間を守るため、全員で生き残るために最善策を導こうとしている。
一番体力の無さそうな美衣を引っ張っていくことを決めたのはそのためだろう。
情けないことに、自分はそれに従うことしかできない。こんな時に男だというのに全く頼りにならない。自分に嫌気が差す。
走りながら後方を確認した燈良は、怪物の近くから何かが飛び出したのを見た。
複数あるそれが一体何なのかは全くわからない。しかしこの状況をより悪いものにする存在だということだけは確か。
そしてそれは、彼らのすぐ目の前に飛来して地上に降り立った。
「な、何……! ど、どうすればいいの!?」
前方を走る友梨依の足が止まる。
やって来たそれらは、人の形をした、ボロボロの布を纏った色白の生物。
人の形をしているとは言っても、こちら側のものではないことは明白。
それはまるで、妖怪やゾンビの類にも見える。
「来る……ッ!」
その生物は両手両足を駆使し、凄まじいスピードで地面を這って迫る。
「い、いやぁああッ!!」
友梨依は後ろに走り出した。
その生物たちは周囲の逃げ惑う人々を捕まえ、そして顔に噛みつき、貪り食う。
人間が捕食されるという、初めて見るショッキングな光景に燈良は呆気に取られ、地面にへたり込んでしまった。
最初のコメントを投稿しよう!