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こちらを向いた怪物が大きく口を開けると、そこに黒いエネルギーのような光が集まっていくのが見える。
「や、やばい……ッ!」
燈良は先に行こうとする沖川の腕を引っ張った。
「ふ、伏せろッ!!」
この人混みの中、燈良は沖川と共に地面に伏せた。
すると次の瞬間、大きな閃光と振動が周囲に響き渡った。
彼らが進もうとしていた先は、怪物から放たれた黒いエネルギー砲によって破壊され、そこにあったすべてのものが消え去ってしまった。
そして次に訪れたのが、人々の血と肉が混じった、おどろおどろしい雨。
「い、いやぁあああッ!」
美衣は悲鳴を上げ、そして全身を震わせた。
燈良はその近くで、自分に降りかかったぬるぬるした何かを振り払い、そしてそれが何かを想像しただけで胃から何かが込み上げてきた。
「おッうぇええッ!!」
嘔吐物を吐き散らしながらも、何とかその場から離れようと地面を這っていく。
「みんな無事か?」
沖川が声を上げると、三人は何とかそれに反応した。
「とにかく走るんだ!!」
沖川は燈良を無理矢理立たせ、背中を押す。
「で、でも……!」
視界の先に広がるのは、崩壊した建物の瓦礫と、粉々に砕け散った人だったものの残骸。
「男だったらこんな時にうじうじしてんじゃあねぇ!とにかくお前は先に行け!!」
沖川はそう言い放つと、美衣の手を握った。
「美衣ちゃん! 俺がついてる!走ろう!」
「むっ、無理……! 私たち……みんな死んじゃう!!」
燈良はパニックになる美衣を沖川に任せ、近くにいた友梨依と一緒に走り出した。
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