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式場に着いたわたしは伊月と一度わかれ、親族の控え室に行った。親戚や相手の親族にご挨拶して、フロントスタッフに紹介がはじまる時間を尋ねると、式の30分前らしい。
ちょうど20分ほど時間に余裕があったからブライズルームの場所を聞いて、リョク兄の元へ向かった。この式場は新婦と新郎の控え室がバラバラにできてるんだって。だからきっと、お互いの姿はまだ見てないんだと思う。
ゆっくり歩いてブライズルームの前に着くと、中からリョク兄の声が聞こえた。
「もしかしたら俺は……
……─── 美鶴のことが、好きだったのかもしれません」
誰に話してるのかはわかんない。いや、なんとなくわかるけど。それよりも、その突然の言葉に、わたしは、心臓がとまりそうなくらい動揺していた。
ドアノブにかけた手を下ろす。
心臓が、はやく動いているのを感じて、かたく目を閉じた。
リョク兄 ────…
「だけど、それ以上に兄貴なんですよ、僕」
「ええ、わかります。本当に素敵な家族だなとうらやましくなるほどに…佐川さんは、お兄さんですよ」
そう。いつだってリョク兄は、わたしのたった一人の家族であり、お兄ちゃんだった。
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