カクテルドレスのヨロイ

テールグリーンで餞

　◇

「本当に妹さんと仲良しですね。目元がそっくりですし、佐川(さがわ)一家は美人さんばかりなんですね！」

…ぶっとばそうかな、この人。

それかこのグラスの中身をぶっかけてやろうかな、と陳腐な炭酸を喉に通しながら思う。

お洒落にホットピンクカラーの花びらが２枚浮かんでいるけどただのジンジャーエール。結婚式場だからって気取ってんじゃないわよ。

「ははは。妹は僕にだけ生意気で、まだまだ子供なんですけどね」

「そんなことないですよ、わたし」

「あはは、本当に仲良し！でも兄弟なんてそんなものだと思いますよー。私も４つ下の弟がいるんですけどただのワガママで困っちゃいます。でも佐川さん前回の打ち合わせでもお話してくださりましたけど、妹さんとってもしっかりしてらっしゃる素敵な方じゃないですか！今日はお会いできて本当にうれしいです」

にこり、と完璧な接客用笑顔を向けられ、グラスにくちづけた口端を無理矢理あげた。

リョク兄の前で変なことをする勇気もないわたしは、この最強にムカつくウエディングプランナーをぶっとばすことも、ジンジャーエールをぶっかけることも、その笑みを無視することもできない。