第58話・オフクロの悩ましき日常2(安心してください健全ですよ)

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第58話・オフクロの悩ましき日常2(安心してください健全ですよ)

「ちょ……っ! ア、アニキぃー……こんなにデカいの、ムリ……っ」 真司は、マナジリの切れ上がった気の強い鳶色(とびいろ)の目を切なく(うる)ませて、兄を上目づかいに見上げた。 敦司は、端正な唇の端を意地悪く上げて、冷やかに命じる。 「ダメだ。……ほら、もっと大きく口を開けてみろよ」 「む……ぐぅ……んんんぅ……っ!」 想像以上に質量のあるソレを強引に口にくわえさせられて、真司は、ムセかえりそうになりながら、苦しげにうめいた。 「もっと、奥まで突っ込めるだろ? さあ……」 「っぅ……んぐ……んぅ……んんんふ……っ」 「よしよし、いいコだな……真司は、太いのが大好きだもんな?」 「んぅっ……んんーっ……ぅぅ……っぐ」 口中いっぱいに詰め込まれたソレの尖端は、ノドにまで達しそうで。 ギュッと閉じた真司の両目から、ひとりでに涙があふれた。 ツヤヤカな桜色の唇の端から、透明な唾液が切なげにシタタリ落ちると、兄は、ふいに優しい声色でささやく。 「ちゃんと、全部、飲み込むんだぞ……少しも残さずに」 真司は、コクリと小さくうなずき、口の中のソレを必死に貪った。 上泉家でも恒例となっている、その2月3日の季節行事を、テーブルの片隅から無言で見守っていた上泉家の夫人は、また今日も、「どうしてウチのコたちは、やることなすことが、いちいちイカガワしく見えるのかしら?」 と、胸の奥でヒッソリと歎息しながら、北北西の方角を向き、みずからも極太(ごくぶと)の恵方巻をガッツリと口にほおばったのであった。
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