1978人が本棚に入れています
本棚に追加
/363ページ
玄関のインターフォンを鳴らすと、少しでドアが開いた。
立っていたのは、明らかに水商売のオネーサンだった。
綺麗な服を着たその人は私と同じ位か、ちょっと年上かもだけど、長い髪もお化粧も明らかに洗練されている。
「田口君、寝てます。どうぞ」
「はい」
心臓が爆発しそうだ。
なんか、緊張する。
「ごめんなさいね。勝手に上がって」
そう言うと、その人は廊下に置いてあった、高そうなバックを掴んだ。
「スミマセン、けど、どちら様ですか」
「えっと、美咲です。田口君のお友達の友達。聞いてない?」
とふわっと笑った。
あ。あの時のタクシーの人だ。
あの時、焦りすぎて顔なんかよく見えなかったけれど、話からすると、この間の副社長の愛人だろう。
「あ。そうですか。何で、今日、雅人と一緒ですか?」
もう帰ってほしいのと、ちゃんと説明してほしいのと、半々。
「今日、私はその人と約束があったんだけど。その人が田口君を用事で呼んで、一緒にタクシーに乗ったら、もうかなり熱があったから、そのまま家に帰れって。ここまで連れてきて、そのお友達は仕事で先に帰ちゃったの」
丁寧に説明してくれたけど、相手が副社長だと明かさない。
カモフラージュに呼びつけたら、風邪引いてて、送ったということか。
最初のコメントを投稿しよう!