【 約束 】

1/1
60人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

【 約束 】

「皆、覚えているだろうか……」  10年後の4月29日。  ゴールデンウィークに入ったこの日、俺たち3人は、約束していた小学校で会うことになっている。  東京から久しぶりに、卒業したこの地元の小学校を俺は訪れていた。  坂の下の駐車場に車を停め、この小さい頃に毎日通った校門までの坂を上って行く。  何もかもが、とても小さく見えた。  小学生の頃は、もっと大きかったはずの学校がとても小さく見える。  この坂も道幅がこんなにも狭く、校門までの距離もこんなにも短かったと今更ながらに思う。  校門を(くぐ)ると、懐かしい薄黄土色の運動場が見えた。  この運動場もまた、とても小さく見える。  昔あった遊具はいくつか消えており、鉄棒だけが唯一、寂しく運動場の隅に残されていた。  運動場を歩き、待ち合わせ場所の校舎の前にある国旗掲揚塔(こっきけいようとう)まで行く。  すると、淳司(アツシ)がそこに座って待っているのに気付いた。 「アッシー! 久しぶり」 「よう、ヒロリン! 東京からわざわざご苦労さん!」  この少し吊り目で、背の低い茶髪の男が、小学校の時の同級生『淳司(アツシ)』。  アツシなので、あだ名は、『アッシー』。非常に単純なあだ名だ。  そして、俺は、博之(ヒロユキ)から『ヒロリン』と呼ばれていた。 「タケヤンは、まだ来てない?」 「大阪から朝こっちに向かったって連絡があったから、もうすぐ来ると思う」 「そうか」  ちなみに、タケヤンは、『武英(タケヒデ)』から来ている。  すると、そのタケヤンが大きな体を揺らして校門から手を振り走ってくるのが見えた。 「おお~! タケヤン! こっちこっち」  俺たちは、10年ぶりに約束したこの小学校へ集合した。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!