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「……なあ、次、いつ休み?」
「手帳見ないとわからないけど……。手帳、家なの。」
流石に必要はないと思って、置いてきてしまった。
「じゃあ、帰ったら連絡してくれ。……短時間でもいい。飲みに行くのでもいい。デートしよう。」
うっ、うれしい…!
あたしは野村さんの胸の中で何度も何度も頷いた。
「時間がかかってもいい。苦手が克服できるまで待つからさ……」
そこまで告げると、あたしの耳元で、今日一番甘く甘く囁いた。
「………苦手が克服できたら、千晶を食べさせて。」
「っ!?」
なんのことを言ってるのか、わからないわけじゃない。
「……恐いと少しでも思う相手となんて、やっぱり躊躇うだろ?恐いと思いながら相手されるのも辛いし。」
……優しい…。
きっと、顔を見れれば、とびきり優しい顔をしてるのかなと思うけど……
まだ真下から……超至近距離で野村さんの顔を……目をみるのは、多少恐い。
「……みぃとたっくんが大きくなるまでには克服できるかな…?」
あたしは小さくポツリと呟いた。
こうなった原因がはっきりしていれば解決もしやすいのかもしれないけど、いかんせん『背の高い男の人の、上からのぞき込むような目線』が苦手になった理由はさっぱりわからない。
理由はわからないけど、幼い頃からだから、苦手意識は根深い訳でして……。
克服したいけど、克服できる保証はない。
「流石にみぃちゃんと隆が大きくなるまでには克服させてみせるよ。そこまでおあづけ食らうのは、健康な成人男子として辛いものがあるし…。単純に、保育園児に負けられないからな。」
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