53人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
(まるで、王子様みたい。)
私は他人事のように感じながらも、聡司さんの片膝をついた姿にトキメキを覚えていた。
良く考えて言わなくてはならないと、考えを巡らす。
聡司さんは私が返事に困っていると思った様で、
「遠慮なく本当の事を言って下さい。」
聡司さんは眉間にシワを寄せて、握っている手に少し力が入るのを感じた。
ちゃんと答えようと、深呼吸をする。
「聡司さんはお見合い相手が、高校生の私で正直ガッカリしたと思います。
でも男性にエスコートされたのも、
『恋に落ちた』と言われたのも、
こんなにドキドキしたのも初めてなんです。
こんなに素敵な聡司さんに、どう答えたらいいのか分かりません。
でも…」
「でも?」
「でも、まだ勉強を頑張りたいんです。
人見知りだし、言いたい事を中々言えないし、
我儘だし…。私、聡司さんに相応しい人になりたいんです。
こんな私の事を、待っていてくれませんか?」
待つと言って欲しいが、もしかしたら聡司さんは光源氏のようにすごく女性にモテて、色々な人と浮名を流すのではないだろうか。
もしそうなら、耐えられる自信が無い。
それに聡司さんは本気で自分との結婚を、考えてくれるのか。
聡司さんは目を細めて、私の肩に手を置いて立ち上がらせる。
「紫さんは、本当に可愛いですね。私は光源氏のように、あんなにモテませんよ。
それに少なくとも、紫さんの我儘なら何でも聞きます。
これが私にとって最後の恋です。
あなたを待ちますよ。」
聡司が優雅に微笑んで、私の耳元に顔を寄せて囁いた。
「そして20歳のあなたの誕生日に、
結婚をしましょう。」
最初のコメントを投稿しよう!