若紫

4/4
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
(まるで、王子様みたい。) 私は他人事のように感じながらも、聡司さんの片膝をついた姿にトキメキを覚えていた。 良く考えて言わなくてはならないと、考えを巡らす。 聡司さんは私が返事に困っていると思った様で、 「遠慮なく本当の事を言って下さい。」 聡司さんは眉間にシワを寄せて、握っている手に少し力が入るのを感じた。 ちゃんと答えようと、深呼吸をする。 「聡司さんはお見合い相手が、高校生の私で正直ガッカリしたと思います。 でも男性にエスコートされたのも、 『恋に落ちた』と言われたのも、 こんなにドキドキしたのも初めてなんです。 こんなに素敵な聡司さんに、どう答えたらいいのか分かりません。 でも…」 「でも?」 「でも、まだ勉強を頑張りたいんです。 人見知りだし、言いたい事を中々言えないし、 我儘だし…。私、聡司さんに相応しい人になりたいんです。 こんな私の事を、待っていてくれませんか?」 待つと言って欲しいが、もしかしたら聡司さんは光源氏のようにすごく女性にモテて、色々な人と浮名を流すのではないだろうか。 もしそうなら、耐えられる自信が無い。 それに聡司さんは本気で自分との結婚を、考えてくれるのか。 聡司さんは目を細めて、私の肩に手を置いて立ち上がらせる。 「(ゆかり)さんは、本当に可愛いですね。私は光源氏のように、あんなにモテませんよ。 それに少なくとも、(ゆかり)さんの我儘なら何でも聞きます。 これが私にとって最後の恋です。 あなたを待ちますよ。」 聡司が優雅に微笑んで、私の耳元に顔を寄せて囁いた。 「そして20歳のあなたの誕生日に、 結婚をしましょう。」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!