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「おめでとうございます。今妊娠六週目ですね」
「……六週目?」
「はい。ただまだ心拍が確認できないので母子手帳もらいに行くのは待ってくださいね。
そうだなあ……二週間後、また来れますか?」
「あ、はい……」
「じゃあ二週間後にまた来てください。そこで心拍確認できればその後母子手帳をもらいに行ってくださいね」
「……はい。わかりました……」
とんとん拍子で進んでいく話。私は返事をしながらも、パニック寸前で。
「っと、聞くの忘れてた。まだご結婚はされていないようだけど、産む方向でいいのかしら?」
「……え?」
「もし望まない妊娠で、産まないっていう選択をするのなら手術の日程もあるから早めに教えてください」
「……望まない、妊娠」
「よくあるのよ。レイプされて、誰にも言えないまま気が付いたら妊娠してたとか。子どもが嫌いだから産みたくないとか。親になるには年齢が幼すぎるとか、経済的に育てられないから堕ろしたいとか。理由は様々よ」
「……」
「貴女の顔色があまり良くないから心配になって。土足で踏み込んでごめんなさいね。でも大切なことだから、相手とよく話し合って」
「……はい」
そんなに暗い顔をしていたのだろうか。
実際にエコー写真を渡されて、まだ何が何だかわからない、袋のようなものを見つめる。
「今はまだ全然わからないと思うけれど、徐々に人の形になっていくのよ」
「そうなんですか……」
「後悔しない選択をしてね」
「……はい」
お医者さんに頭を下げてから、診察室を出た。
会計を済ませて病院を出ると、真っ先に静香に電話をかけた。
『もしもし?美玲?どうだった?』
ワンコールですぐに出てくれた静香。
どうやらずっと待ってくれていたようだ。
「……今、六週目だって」
『そっか。おめでとう。……でいいのかな?』
「……まだわかんないけど」
一度家に帰っていた静香が、もう一度私の家に来てくれたのはそれから二時間後。
「ごめんね。二日も連続で」
「何言ってんの。美玲の一大事なんだから気にしないで」
「うん……ありがとう」
静香はエコー写真を見て、「エコーって、こういう感じなんだね。どれがどれだか全然わかんないや」としみじみ呟いた。
そして、
「これからどうするの?」
核心をついた質問に、私は口を噤む。
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