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一ヶ月の楽しみ
眠る前に交わすおやすみの言葉。
それはとても心地よく、今日一日が終わるんだなと思える。
でも、この時の私は知らなかった。
おやすみが、あんなに恐ろしいなんてことを――。
とある学校のお昼。
私は仲のいい友達二人と、いつものように教室でお弁当を食べていた。
他愛ない話をしていたら、友達の内の一人、香里に彼氏ができたことが報告されて一気にその話で盛り上がる。
私達も高校一年生、恋だってしたいけどなかなか運命的な出会いもなく過ごしていた。
そんな私達三人の内の一人に彼氏ができたんだから、喜ばないはずがない。
そこからは私ともう一人の友達、弥由の質問攻め。
この学校の人か、どんな人か、いつから付き合いだしたのかと尋ねれば、香里は照れくさそうに頬を掻く。
「この学校にはいないけど、年齢は一緒。付き合い出したのは二週間前からなんだけど、カッコイイんだ」
「いいなー! 写メとかないの?」
弥由の言葉で香里はスマホを開くと、画面を私達へと向ける。
そこに写っていたのは香里と男性。
横顔ではあるけど、これはかなりのイケメン。
この学校にいる男子達が芋にさえ思えてきた。
「どうやって知り合ったの?」
私が尋ねると、香里は嬉しそうに話してくれる。
彼の事を話すその表情、声は本当に幸せそうで、まるで自分の事のように嬉しくなる。
話によると、出会ったのは街を歩いていたときで、急に声をかけられて振り返ったらイケメンがいた。
もしかして、ナンパなんじゃないかと思ったみたいだけど、流石にこんなイケメンが自分なんかをナンパしないだろうと思っていると、案の定道を教えてほしいというもの。
ガッカリしながらも目的地を説明するが、彼は方向音痴らしく、特に急いでいなかった香里はその人と目的の場所まで一緒に行くことにした。
ついた先はオシャレなカフェ、こんなカッコイイ人なんだから彼女がいてもおかしくはない。
案内も済んだし帰ろうとする香里に、彼はお礼がしたいからと言い、そのカフェで一緒にお茶をすることになった。
誰かと待ち合わせをしてたんじゃないのか尋ねると「残念ながら僕に、そんな相手はいませんよ」と苦笑いを浮かべていた。
「そこから連絡先交換して、話してくうちに、ね」
「何その運命的な出会い!!」
「あー、香里に先越されたー」
二人悔しがりながらも、内心よかったねと思っていた。
なのに、まさかあんなことになるなんて――。
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