第6章 俺が恋のキューピッドになろう

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「私は、ここから飛ぼうと思ってた。でも、こんなのは私が望んでいた未来じゃないって気づかせてくれたのは、滋。あなたなの。あの時、あなたを選べなくて、ごめんなさい。それでも、大好きだったよ。滋先輩の明るさに、私は救われたわ。何度も。何度も…」 「萌梨」 萌梨は自分の胸に手を当てて、微笑んでいる。 「だからね?私はもう、お母さんと行かなくちゃいけないけど、心は、ずっと繋がってる。ずっと、そばにいる。ありがとう。ごめんね。…ありがとう。大好きです」 萌梨はそう言ってふわりと俺を抱きしめた、と思ったら、すり抜けて、俺は咄嗟に振り返った。が、もうそこには誰もいなかった。 萌梨。 謝るのは、俺だよ。 感謝したいのも、俺の方だよ。 でも、お願いだ。 さよならなんて、冗談でも言うなよ。 萌梨。 大好きだったよ。 * その翌朝、萌梨が静かに息を引き取ったなんて、誰が信じる? 夕べ、寝る前に祐から電話が来た。萌梨の意識が戻って、話をすることができた、と。あんな嬉しそうな祐の声なんか聞いたこともない。でも、俺も嬉しかった。 なのに、 俺の到着を待たずして、 誰一人に看取られることもなく、朝方一人、静かに息を引き取ったなんて……。 俺がまたすぐに静岡に戻ったけど、祐も、圭太も、美夜も、萌梨の祖父母も…それに、雪子と坂井さんもみんないて、みんなが声を上げて泣いていた。 まるで、これは悪魔だよ。 悪夢だから、早く目を覚さなくちゃいけない。 そうだよな?
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