プロローグ

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プロローグ

俺の願いはただひとつ。 もうどこにも行かないで。 ずっと、傍に居て。 おじいちゃんになっても、ずっと。 死ぬまで(ひかる)と一緒に、音楽を続けたいんだ。 まるで小さな子どものように泣きじゃくりながら、親友・勝行(かつゆき)はそう言った。 親に捨てられて、要らない子と言われた俺を――今西光(いまにしひかる)を「愛してる」と抱きしめながら。 それは途方もない未来の話。 勝行はいつも俺の隣で、うんと遠い先を見ている。 俺は苦手だ。未来は見渡す限り真っ暗で何も見えないし、怖くていつも目を伏せる。 そこには必ず「(おわり)」と「別離(わかれ)」が音もなく迫ってくることを知っているから。あいつに置いて行かれないよう、情けなくしがみ付いているだけ。 勝行はいつも数歩前を進んで道筋を作り、時折振り返っては俺に手を差し伸べてくれる。 ゆっくり、ゆっくりしか歩けない、できそこないの身体に寄り添って。綺麗な歌声で俺を呼ぶ。 「おいで、光」 そんな優しい男がもし、自分のせいで不幸になるかもしれないと気が付いたら……? 俺は一生、この人生の選択を後悔するだろう。 そして何度も何度も、感情を歌にのせて祈り続ける。 どんな未来が訪れても、君は幸せでいてくれますように――。
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