紅茶とガムと

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紅茶とガムと

 木製のローテーブルに真っ白な皿とカップが置かれている。カップからはゆらりと湯気がのぼり、熱も同時に外へ逃げ出していく。それをのんびりと眺めながら、無意識のうちに口を動かしていた。とっくに味が無くなってしまったのに、何時までも未練がましく咀嚼し続けていた。早く飲めとばかりに上がる狼煙を、ふうと一息で吹き飛ばす。しかし、それはすぐに蘇ってしまった。少し萎縮したように線が細くなったのは気のせいか。脳と胃の認識の差から込み上げる気持ち悪さを取り払うように、ゴムのようになってしまったものをティッシュへ吐き捨てた。混乱しているのか、脳は『Yes』『No』を交互に繰り返しているようにも思える。カップを手に取ると、琥珀色の液体がゆらりと揺らめいた。湯気もないそれを見た途端、指令はひとつに固まった。次の瞬間、カップは真っ白へ戻る。口内に残る香りが鼻へ抜けていった。
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