そっちかよ

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「ビックリしたー、まさかあんたにこんな所で会うなんて。ここで働いてるんだ。」 「そう。俺も驚いたよ。」 エレベーターの中で偶々二人きりだった為砕けた会話になる。 いつ他の客が乗って来るか分からない為、話したい事は色々あったが暗黙の了解で二人は早々に会話を切り上げた。 真理子は尊を密かにチラリと見る。 (余り変わってないな。) 高校時代の彼を思い出して、そう思った。 上昇していくエレベーターの中、当時の、彼と交際していた時の色々な思い出が脳裏に蘇る。 彼は優しく、二人は仲良く付き合っていたが、ある日突然別れを告げられた。 ずっと好きな人がいて、想いは叶わないと分かっているけれど、やっぱり諦められないと。 相手がどんな人か聞いても、「言えない」とひたすら謝られた。 二人が付き合い始めたのは高校2年の時、同じクラスで学園祭の実行委員を共にやった事がきっかけだった。 交際前、尊の心の中にはその人がいて、告白できない関係だという事は聞いていた。真理子はその事を知っていたが、その人を想ったままでも構わないと言って、二人は恋人関係になった。 半年付き合ったが、尊がやはり諦められないと言って、別れを切り出したが相手は1つ上の先輩という事だけで最後までどんな人か教えてもらえなかった。 真理子は結果は何となく分かっていたがいざ別れる事になると辛かった。 別れた後は何とか気持ちを切り替えて友人として仲良くしていた。 高校3年になると、クラスが別々になり、話す機会も無くなり、接点が無くなって二人はそれぞれの道に進んだ。
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