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さも可笑しそうな物言いで捲し立てる多恵が頬をだらしなく笑わせている。私の気持ちを知っていて、唆すように告げているのだ。
「多恵さん……、どうやら私は、あなたに勝てる所がないみたいだわ」
「いいえ、多恵が冬花さまに勝てるのは、食い気と口だけですわ」
「ふふ、大きなお口の多恵さんがだいすきよ」
「それは友愛です?」
「いいえ? 恋愛だわ」
「ふふふ、原田さまが知ったら卒倒なさるわ」
「もう、多恵さんったら、またお父さまに怒られるわよ」
「その時は、冬花さまも一緒ですから」
二人で顔を見合わせて小さく笑う。何と平和な日なのだろう。心なしか体も軽い気がしている。現金だなと笑って、「それで、どうなさるんです?」と興味津々に訊いてくる多恵に耳打ちした。
「実は——」
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