白い帽子の少女

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 小6の時、英二はとても楽しい毎日を送っていた。何事も取り組み次第では改善出来るものだと前向きに思い、夢と希望に満ち、色んなことに興味を持ち、多種多様な遊びに興じ、クラスに溶け込み、新しい友達が出来、何より女子生徒とおしゃべりしたり遊んだりすることが楽しかった。可愛い子ともそうでない子とも戯れられていたのである。  春の到来が間近に迫った或る日曜日、英二はプラモデル屋に行って戦車のプラモデルとニスと塗料を買った。その帰り、天気同様明るい面持ちで口笛を吹きながら歩道をてくてく歩行し、交差点に差し掛かって横断歩道の前に立ち止まった。 「ああ、赤か。一休み一休み」  歩行者用信号機を見て呟いたものである。青信号になるのを待つ時間も楽しい。そんな時があったものである。少年は呑気で気楽で良いものである。その只中にあった英二の横に自転車が停まった。白い帽子から風に微かに靡く長い髪がちらついた英二は、思わずそっちへ顔を向けた。すると英二はもろに少女と顔を合わせた。純真そうな目がクリクリしていて中々可愛いし妙に見つめて来るので英二は無視する訳にはいかなくなったが、青信号を知らせる音が鳴ったし面識のない子なので声をかけるには至らず横断歩道を歩きだした。そうして可笑しなことに気づいた。少女は自転車に乗っている訳だから自分を追い抜くに決まっているのに一向に少女が横断歩道を渡らないのだ。だから、あれっと思って英二が振り向くと、少女は自転車に跨ったまま佇んでいた。そして英二の方をじっと見ていた。だから英二は只ならぬものを感じ、何で横断歩道を渡らないんだろうと不思議に思いながらも自分は横断歩道を渡ってしまった。それからちょっと歩いてまた振り向くと、その時には少女の自転車は歩道を走り出していた。で、英二は歩きながら思った。そうか。あの子は歩道を真っ直ぐどっかへ行く途中だったんだ。僕の横に停まったのは交差点を渡る為じゃなくて僕に興味を持ったからだ・・・でも興味を持ったくらいで態々停まるかなあ・・・そっか、僕を見て好きになったんだ。一目惚れって奴だ。でも横からしか見てないだろうから一目惚れってのも可笑しいよなあ・・・そっか、あの子は多分、僕のことを前から知っていて僕に言いたいことがあったんだ。つまり告白したかったんだ。でも恥ずかしくて言えなかったんだ。そう言えば思い詰めてる感じだったなあ・・・嗚呼、しまったなあ、やっぱり声かければよかった。何処のクラスだろう。同学年かなあ。嗚呼、クラスが知りたい。  言わずもがな英二は少女と知り合いになり出来れば付き合ってみたくなったのである。
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