【第一章 幼少期】

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【第一章 幼少期】

【第一章 幼少期】 1997年8月5日石川県加賀市にて私は産まれる 父親は離婚し、母子家庭のひとりっことして育つ。母親は夜から朝まで水商売をしわたしや家計を支えてくれた。温泉街が多いこの町では水商売をしている人は多かった。周りもまた母子家庭が多く存在し、逆に両親が揃ってる家庭の方が珍しいくらいだった。 なので母親が仕事に行っている間、兄弟がいる家庭は自分達で料理をし食べる。ゲームをし母親が帰ってくる頃には自分達で布団を敷き寝る。そんな家庭も多く存在していた。 わたしは一人っ子だった為、母親は私がひとり、寂しくないようにひーおばあちゃんやひーおじいちゃんの家に仕事に行っている間は預けてくれた。ひーおばあちゃんは母親の育て親で母親は捨て子だったと聞いている。0歳の頃にアパートで実の両親に放置されていた所を、ひーおばあちゃんが見つけひーおじいちゃんもまた本当の両親のように育ててくれていたようだ。 正直今こうやって書いているだけで母親のことが少し悲しく思えて辛くなる。 母親はわたしに常に言っていた『ママが唯一信用しとるのは育ててくれたひーおじいちゃんやひーおばあちゃん、そしてあなた』 だと。 ・〜愛犬レック〜 おばあちゃん家にはシベリアンハスキーを飼っていた。名前は〝レックス〟恐竜という強い意味らしい、私達は〝レック〟と呼んで可愛がっていた。レックは自分がいかに狼みたいでいかつい外見をしていることをまるでわかってなかった。大きな身体をしているのに、マルチーズに怯えたり小型犬さえ怖がってクンクン鳴いている。しまいには野良猫が自分の餌を食べていても舌を出してハァハァ言いながら眺めているだけ。 身体が大きく宅配便の人さえ怖くて「あのー、すみません大変言いづらいんやけど、犬が怖くてはいられんのやわー」と言う。レックは見た目は怖いけど凄く優しいのに。 私はレックと遊ぶことが大好きだったしレックは私が赤ちゃんの頃一人でトイレに行くのが怖かったわたしは「レック〜」と呼ぶ。すると近くにいるレックがいつも重りを引きづり私がトイレをしている間みていてくれた。 トイレを済ませると「ありがとうレック〜」と撫でて重りを今度は私がよいしょよいしょと元に戻す。 オモチャの車のハンドルを外しピーピー鳴らせばレックは遠吠えをして歌ってくれる。 オモチャのピアノを私が弾けばレックもまた歌ってくれることもあった。 そんなレックにもお友達のワンちゃんがいた。 ゴールデンレトリバーの老犬。 互いにお尻の匂いを嗅いでは静かに近くに座り寄り添っていた。何を話してるのかな? といつも気になっていたが犬同士も犬同士で語りたいこともあるのだろう。すごく互いに心を開きあってるのか安心している様子だった。 レックも昔はやんちゃっこだったらしい。 ひーおじいちゃんと雪の日に散歩中、シベリアンハスキーは雪をみると懐かしいのか、はしゃぎ周り大暴れする。するとひーおじいちゃんはリードに耐えきれずに転んでしまい怪我をしてしまったらしい。近所の人が助けてくれ、ひーおじいちゃんは近所の人に支えて貰いリードは放したまま、レックは申し訳無さそうにリードを自分で引きづったまま大人しく着いていった。実はそんなレックを飼ったのもやんちゃっこだったレックを優しい性格にしつけ育てたのも名前をつけたのも母親だった。 それ以来散歩は母親がするようになった。わたしはいつも着いていった。 コースはいつも決まっている、田舎ではシベリアンハスキーは大変に珍しく近所の人も初めは怖がるがその、優しい目や優しい性格のレックに皆んな心を開きおやつを与えた。 レックは頭を撫でると顔に近きクンクン匂いを嗅ぐその顔がたまらなく可愛い。 母親がある日、レックをライオンカットにしてみたいと言い出した。カットが終わったレックは本当にライオンみたいで狼のようにモサモサの毛並みはライオンのように顔周りや尻尾の毛先だけ良い具合にライオンカットになっている。ちょうど真夏だったから涼しげだった。 もちろん、散歩中は「あら?レックやないの?ライオンみたいになっとるよ笑でも涼しげでいいんねー!ちょっと写真いいけー?」とみんなのアイドルだった。はじめてライオンカットになったレックをみる人は「この子は一体何犬なん??」と不思議がる。母親は「シベリアンハスキーやけどモサモサで暑そうやから思い切ってライオンカットにしたんやわ」と。 私の友達もレックに逢いによく遊びに来ていたし会ってみたいと男女構わずやって来る 「すげぇー!!」「かっこいいー!」「でっけぇー!」「噛まんの?こわいわー」と、自慢の家族だ。 しかし、レックも老犬だ。 突然、寝たきりになる。医者からはもう長くはないと。私はレックに毎日逢いにいった。 当時レックに天国について語ったことを覚えてる 「天国は、なにも苦しいこともなくて楽しいだけの場所だよ。レックの好きなものもいっぱいあって、なにもこわくないよ。だから大丈夫」 わたしはなぜかずっとレックに行ったこともない天国について教えた。きっと死んでしまうことを分かっていたし死ぬことをレックは怖がっていたのかみんなと離れるのが怖かったのかとわたしはレックの気持ちを一生懸命読み取り そして語り続けた。 レックは私の方をジーっと見ていた。わたしもレックをずっと撫でたり肉球を握りしめたりした「なにも怖くないよ。大丈夫だよ」と。 そして、次の朝私の言葉に安心したように レックは息を引き取った。 母親やひーおばあちゃん、ひーおじいちゃん、親戚や近所の人達、友達や、そして私も。 皆悲しみ、もうあの遠吠えや優しい目を見られない聴けない。レックは大きな亡くなった動物達の為のお墓に今も眠っている。 私はレックに色んなことを教えて貰った。優しい気持ちや一緒に奏でた音楽。 そしてどんなに強くても弱い者には優しく接するということを。 家は一気に寂しくなった。ひーおばあちゃんは間違えてレックのご飯を作ってしまっていたこともあった。台所から振り返り「ばあちゃん間違えて作ってしもうたわ!笑」と明るく笑うが 台所に顔を戻すと身体を震えさせ泣いているのがわかる。 近所の人からは「新しいワンちゃんでもこうたらどうやろか?」と言われるが 皆揃って「新しい犬はいらん。わたしらの犬はレックだけや。他の子はいらんのよ」
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