第五話 演劇練習

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 でも、しなかった。  そしてカイは最近になって条件付きで言ったんだ。  『抱かせろ』と……。  もしかすると、カイはあえてあんな条件を付けたのかもしれない。  そういう約束でもしないと私と本契約する勇気が出ないから……。  普段のカイを見ている分にはそんなことありえないように見えるけど、今の三尾先生の話を聞くとそんな気がする。  カイは……何を考えているんだろう……。  私は視線を落とし、カイのことを考えた。  すると突然三尾先生が声を上げる。 「ああ、もうこんな時間か。長居し過ぎたな」  その声に三尾先生を見ると腕時計を見ていた。  いつもの無表情に戻った顔で私を見ると、「ではな」とだけ言い残してさっさと校舎内へ戻っていってしまう。  さっきまで重い話をしていたとは思えないくらいいつも通りだった。  三尾先生……。  ああいうのも、ある意味マイペースって言うのかな……?  何だか呆れてしまう。
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