僕は君のもの

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 カフェテリアに行くと、いつものメンバーが集まっていた。  さっきまで教室でエッチなことをしていたと思われないよう、平静を装いながら二人は中に入っていく。 「おっ、仲直りした感じ?」  樹がニヤニヤしながら二人を見ている。 「帰ったら補充しないとだね」  樹は楽しそうに指で輪っかの形を作る。 「うるせぇ」  樹は大和に口を押さえられているにも関わらず、楽しそうに高笑いをしていた。 「あっ、大和〜!」  その時、大和と同じ学年の優奈が手を振りながらやってくる。  以前優奈に牽制されてから、千鶴は彼女が苦手だった。  馴れ馴れしく大和の肩に手を乗せたので、千鶴は悔しくて胸が痛くなる。 「今日飲み会あるんだけど来ない? 合コンも行ったって聞いたよ」  一瞬千鶴の顔が引きつり、周りの空気も緊張感を帯びる。  今までは軽く返事をしていた大和も、さすがに今日はそのことに気がついた。 「悪いけど俺はいいや。その……彼女が嫌がるからさ」 「最近付き合い悪いよねぇ、大和」 「でも俺は彼女の気持ち優先したいし」 「ふーん……彼女、意外と心が狭いんだ〜」  優奈が千鶴に向かって言っているのは明白だった。 「千鶴ちゃん、落ち着いて」 「あんなの相手にしちゃダメ」  紗世と美琴が千鶴をなだめる。 「大和だって今まであんなに遊んでたんだから、いきなり束縛されたらうざいんじゃない? 少しくらい解放してあげないと大和がかわいそう」  大和が優奈の手を振り払おうとした時だった。千鶴が大和に抱きつき、優奈を睨みつける。 「手を離してください」  その場にいた全員が千鶴の行動に驚き、口をつぐんだ。 「心が狭くちゃダメですか⁈ 私は彼女以外の人と出かけたら浮気って思っちゃうくらい小さい女かもしれないけど、好きだから私だけ見て欲しいって思うのはおかしいんですか? 彼女なんだから、それくらい思ったっていいじゃないですか……」  千鶴が大和の胸に顔を埋めてきたので、大和はつい条件反射で抱きしめてしまう。  優奈は呆れたようにため息をつく。 「大和さぁ、こんな面倒くさい女でいいの? 今までの彼女と全然違うじゃん。理解できないんだけど」  しかし優奈の言葉に反し、大和は顔を真っ赤にして鼻の下を伸ばしていた。そして樹に向かって話しかける。 「樹……なんかいいな、こういうの」 「はいはい、良かったね」 「俺、独占されたい欲が強かったみたいだ」 「大和の場合は、本気で愛されたかったんじゃない?」 「なるほど……確かにそうかもしれない」 「うわ、めちゃくちゃはしゃいでるよ、あいつ」  大和は千鶴の頭を愛おしそうにそっと撫で、優奈の方を向く。 「俺は千鶴の彼氏だから、千鶴の言うことしか聞くつもりないから」  俺を大事にしてくれる千鶴だから、俺も千鶴を大事にしたいんだ。 「マジで……そんなの大和じゃない」  "大和じゃない"か。言われて笑った。そう、俺も"俺"でいることに囚われ過ぎてたんだよな。 「それは違う。本当の俺はこっちなんだ。千鶴のおかげでやっと元に戻れた」 「はぁ……もういいよ。じゃあね」  優奈が去った後も、千鶴は大和から離れない。 「千鶴?」 「だ、大それたことをしてしまった……。恥ずかしくて顔をあげられないよ……穴があったら入りたい」  それを聞いたみんなが大爆笑した。 「あんなはっきり『大和は私のもの〜!』って宣言して、今更恥ずかしくなる⁈」 「いや、言われた俺は感無量なんだけど」 「なんか大和が千鶴ちゃん化してきてるぞ」  大和の胸から顔を上げた千鶴が、不安そうに大和の顔を見上げた。 「やっぱりうざい……?」 「言っただろ。千鶴の独占欲なら大歓迎だって」 「大和くん……大好き過ぎるよ……」 「何それ」  大和は笑った。 「俺はお前のものだけど、お前は俺のものだってこと、忘れるなよ」  誰でもいいわけじゃない。千鶴だから。君の全てを受け止めたいんだ。  
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