第一章 開幕

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第一章 開幕

 この物語は、ある独りの少年が引き起こした哀れな『舞台』のお話。 「待て!!!」  午前二時。闇に支配されたこの時間に、閑静な街に響き渡る男の叫び声。背後から聞こえるそんな男たちの声から逃げるように、青年は裸足のまま無我夢中で走っていた。冷たいアスファルトは青年の足から熱を奪い、落ちていたガラス片は傷をつけた。それすら気にしない……いや、気にならない様子で青年は走り続ける。 捕まりたくない。もうあんな所居たくない。嫌だ!なんで俺がこんな目に……!  悲しみや怒りを堪えるように唇を噛み締めて近くの路地裏へと逃げ込んだ。乱れる呼吸を素早く整え息を殺す。やがて男たちはその路地裏を気にすることなく走り去った。  そして気配が無くなるのを確認してから青年はその路地裏から出て、また走る。逃げる。あんな場所から、自身の運命から。
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