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「だって、今日は一応デートじゃないですか」
「何度も言うようだけど、デートじゃなくてお礼――……」
「あ、れーこさん。あんなとこにハンモックがある」
あくまでもデートだという姿勢を貫こうとし続ける広沢くんに、今日何度目かになる反論をしようとしたけれど。
故意にか偶然か、別の方向に視線を向けた広沢くんにあっさりと交わされた。
ため息をつきながら広沢くんが見ているほうに視線をやると、花が植えられたガーデンから少し外れた遊歩道の先の木に、ハンモックがいくつかぶら下げられていた。
丘の下の景色が見えて見晴らしが良くなっているその場所は、ガーデンを歩いて巡る来園者のための休憩スペースになっているらしい。
ハンモックのそばには景色を眺めながら休憩できるような木製のベンチも置かれていた。
ちょうど、ベンチに座って休憩していた年配の夫婦が立ち上がり、その休憩スペースが無人になる。
そのタイミングを見計らって足早にハンモックに近づいていった広沢くんが、勢いよくそれに飛びのった。
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