6. 夕暮れの告白

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. 分かっている……。 分かってしまったから、期待してしまっている。 その問いかけに微かに頷いてみせると、今度は陽斗のほうから私の手を握った。 「俺は、萌が好きだ!!」 「……」 「何度でも言ってやる。だから、今度は違う返事が欲しい……!」 一度目の告白と全く違うのは、その言葉に泣きそうになっている自分自身。 離れてみて失ってみて漸く、陽斗が自分にとっていかに大事な存在かを思い知った、そんな3ケ月だった。 陽斗の大きな手を握り返し、想いを言葉に代えた。 「私も、陽斗が好き……。だからもう、他の女の子を選ばないで……」 大切な何かを欠いてしまう虚無感。 あんな想いは、もう二度としたくない。 この先も陽斗にとって、いちばん大切な女の子でいたい。 呆れられるかな……。馬鹿みたいだって笑われるかな……。 ううん、陽斗はそんなことしない。 こういうときの陽斗は、いつだって泣きたくなるくらいに優しくて温かい。 「……俺の片想い歴は長いんだからな。今更、取り消すことはできないぞ」 「うん……」 「お前を誰にも渡したくない。海翔にも……」 「私がこの先もずっと側にいて欲しいのは、陽斗だもん。だから……」 安心して、私の気持ちを受け容れていいよ。 そう言いたかったのに、不意に抱きしめられたから、何も言えなかった。 陽斗の温もりが、緊張していた気持ちを和らげてくれる。 .
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