583人が本棚に入れています
本棚に追加
/296ページ
.
分かっている……。
分かってしまったから、期待してしまっている。
その問いかけに微かに頷いてみせると、今度は陽斗のほうから私の手を握った。
「俺は、萌が好きだ!!」
「……」
「何度でも言ってやる。だから、今度は違う返事が欲しい……!」
一度目の告白と全く違うのは、その言葉に泣きそうになっている自分自身。
離れてみて失ってみて漸く、陽斗が自分にとっていかに大事な存在かを思い知った、そんな3ケ月だった。
陽斗の大きな手を握り返し、想いを言葉に代えた。
「私も、陽斗が好き……。だからもう、他の女の子を選ばないで……」
大切な何かを欠いてしまう虚無感。
あんな想いは、もう二度としたくない。
この先も陽斗にとって、いちばん大切な女の子でいたい。
呆れられるかな……。馬鹿みたいだって笑われるかな……。
ううん、陽斗はそんなことしない。
こういうときの陽斗は、いつだって泣きたくなるくらいに優しくて温かい。
「……俺の片想い歴は長いんだからな。今更、取り消すことはできないぞ」
「うん……」
「お前を誰にも渡したくない。海翔にも……」
「私がこの先もずっと側にいて欲しいのは、陽斗だもん。だから……」
安心して、私の気持ちを受け容れていいよ。
そう言いたかったのに、不意に抱きしめられたから、何も言えなかった。
陽斗の温もりが、緊張していた気持ちを和らげてくれる。
.
最初のコメントを投稿しよう!