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4 眠れる森の美女
まるで巨人に小突かれたような大きな振動がしたあと、立っていられなくなるほどの衝撃が研究室を揺らした。非常用の照明が明滅して、パラパラと天井から塵が落ちた後、再び静寂が訪れる。バランスを崩し床に倒れこんだリリィを、美夜は俊敏な動きで助け起こした。
「怪我はないかな、お姫様?」
美夜は顔に笑みを浮かべ、こめかみから血を流し、片手には拳銃を握っている。
リリィは顔面蒼白になり血の気が失せていたが、無理矢理に笑顔を作った。
「大丈夫よ」
「ここが占領か殲滅されるのは時間の問題だな。予定より早いトリップになりそうだ。──ヴォルフ、先に行け!」
「わん」
忠実なブル・テリアは主人の命令通りに、無味乾燥な長い廊下を先導した。
いくつかの廊下を曲がり、地下シェルター奥深くの研究所にまで侵攻してきた敵兵へ、ヴォルフの勇敢な牙が襲いかかり、美夜の弾丸が仕留める。
目的の部屋はシェルターの中でもさらに強固なシェルターというべき空間だった。鉛の扉は二重になっていて、美夜とリリィの二人掛かりで開閉し中へ入ると、美夜は手元の照明電源を押し上げた。
照明のついた部屋の中央に、つるりとした石のような、不思議なオブジェクトが置かれている。リリィには見たことがない装置だった。美夜はそれに駆け寄って足元のパネルを操作すると、蓋が上向きにぱっくりと開いた。
「さあ」
美夜がリリィを未知のカプセルに寝かせようとするが、リリィは美夜の引く手をためらいがちにすり抜けた。
「タイムマシンと違うわ。これはなに?」
「神に抗う方法さ」
美夜の表情が冷ややかな真剣さを帯びた。
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