第3話 暗転

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「経理課のみんなからやっと結婚を決めたのかって言われたけど、斗翔は社長になにか言われなかった?大丈夫?」 藍色で描かれた麻の葉模様の取り皿を並べて、木のしゃもじでちらし寿司を取り分けた。 麻の葉模様には魔除けの意味があるんだよと斗翔が教えてくれた。 デザインの勉強をする斗翔は色々なことを知っている。 たまたま選んだ皿の模様にも意味があることを知った。 教えてもらわなかったら、ただ何気なく使っていただろう。 本当に天才なのは斗翔だよと心の中で呟いた。 天才と呼ばれることを斗翔は嫌うから。 「社長には今までどおりに仕事はやるって言ったら、それで納得してもらえた。最近はデザインの依頼が多いから、社長としてはそっちに専念してほしいらしいよ」 「そう」 きっと社長は自分より実力や人望のある斗翔をこれ以上、本社に置きたくなかったに違いない。 クライアントの評判は上々で最近、国際的な建築デザインのデザイン賞を受賞した。 雑誌にも載って森崎建設の建築設計は森崎斗翔に頼みたい、それ以外はちょっとと言われるくらいになっていた。
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