バグナの森

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 その夜の宴の最中、アンナは王女としてそつなく各々の族長と会談をするなか、外交官であるモーリは実務レベルでの話し合いをして、水面下での根回しをしてまわった。  そして協力の約束を交わして3日後の朝、旅姿となったアンナとモーリは見送られて帰途につこうとすると、3人のウサギ獣人がやってきた。 「あら、お見送りに来てくれたの」 嬉しそうに話しかけるアンナに、ふて腐れた顔で違うと言う。そのカイアの後頭部を叩きながらティアが前に出る。 「アンナ王女、我ら3人シシオウ族長の命により御国まで護衛させていただきます」 それを聞いてアンナは少し困った顔をする。例の生地でできた旅マントをまとい、ふたたびデス・ロードで帰るつもりだったが、旅姿ではあるが獣人らしくほぼ裸にちかいティア達の装備では、おそらく越えられないと思ったからだ。  とはいえ族長からの命を受けた彼女らの申し出を断るわけにはいかない。モーリに目でどうしようと問いかける。 「アンナ王女様、そういえば最近オアシス・ロードというものができたと耳にしています。わたくしの我儘ですが、そちらから帰ってよろしいでしょうか」 モーリがそれはそれは申し訳無さそうに伺うので、しょうがないわねと言いながら、それを許した。 「助かったわモーリ、でもオアシス・ロードはデス・ロードより南にあるんでしょ。帝国の連中に見つからないかしら」 「正直、賭けですな。彼女らのことを聞きながら最も良い方法を見つけましょう」 小声でふたりは素早く話し合うと、あらためて3人に自己紹介してもらう。 「獣人盟主同盟ガロゥが第3盟主ケンの娘、長女のティア」 「おなじく次女のダイナ」 「……三女のカイアだ……」 ふて腐れたままのカイアをティアが注意しようとするのをアンナが遮り、よろしくお願いねと挨拶する。  それぞれの荷物と食料を確認したあと、モーリを先頭に、ティア達がアンナの左右と後ろについて歩きはじめる。  同盟の本拠地から離れて、道なき道をさらに進んでいく。草木をかき分けさらに進むと日が暮れてきた。 「今日はここらで休みましょう。ティアさん達はこの辺りの事を知ってますか」 モーリが訊ねると、鼻をひくひくさせながらティアはこたえる。 「バグナの森の辺りだな。たしかもう少ししたところで泉があった筈だ、そこで野営してはどうだろうか」 「ではそうしましょう。今晩休んだら明日はオアシス・ロードの入口付近まで進み、通り方はその時に決めましょうか」 モーリの提案にアンナが頷くと、ティアはカイアを護衛に残し、ダイナと泉の場所を探しに行った。  ウサギ族らしく跳躍しながらあっという間にいなくなるのを見送ると、アンナは木に持たれかけながら腰を下ろす。 「疲れましたかアンナ様」 「アンナでいいわよ、私もカイアって呼ぶから。こっちにいらっしゃい、お話ししましょう」  戸惑いながらもカイアは横に座り、アンナを不思議そうに見つめた。 「どうしたの」
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