13.それはきっと、夜明け前のブルー

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「俺も、同じだよ。北野の何でも一生懸命なところも、頼りなさげに見えて意外にたくましいところも、見てると励まされて俺もがんばろうって思える」  空を見上げていた瞳が私を捉える。  こみ上げる胸の熱さに、思わず吐息がもれた。  私を見つめる黒崎くんは、今までで一番優しい表情(かお)をしていた。 「わ、私もっ、黒崎くんの……諦めないところも、無愛想なところもっ。優しいところも、すごく、好き。黒崎くんが好き……」    堪えきれずに、ぽろぽろと涙があふれ出る。  それを両手で拭いながら私は必死に気持ちを伝えた。  頭の中がぐちゃぐちゃで、自分で何を言っているのかわからなかった。 「北野」  黒崎くんが笑いながら、名前を呼ぶ。    涙を拭って目を開けると、まっすぐな眼差しが見えた。 「俺も、好きだよ。すごく」  え……。  心臓を鷲掴みにされたみたいに、息ができなくなる。  目を見開いて固まる私を見つめながら、黒崎くんはゆっくりと顔を傾けた。  情報処理がうまくいかないまま、近づいてくる黒崎くんの顔を「綺麗だなぁ」と思って見つめていると、彼はまた困ったような表情を浮かべて、 「キスしようとしてるの、わかってる? できたら目を閉じてほしいんだけど」  ……キス。 「……」 「……」 「えっ!!!」  彼の言葉を頭の中で反芻して、理解がかなり遅れてやってきた。    キキキキス……!!!  ボンッと噴火したみたいに顔が熱くなる。  自分でも真っ赤になっているのがわかった。 「だから、赤くなられると俺までうつる……」  笑いながらそう言って、そろりと頬をなでる。  ずっと困ったような表情(かお)をしている黒崎くんは、ゆっくりとまた顔を傾けた。    わ、わわわ……。  今度は失敗しないように、ぎゅっと目を閉じる。  遠くで私を応援してくれるブルーの鳴き声が聞こえた気がした。
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