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汗ばむ体を脱力させ、虚ろな瞳を柊に向ける。彼の指が琴葉への愛撫をようやくやめる。琴葉の顔を覗き込む柊はそんな琴葉を見てふっと口元に笑みを浮かべる。
「もう…」
柊とすぐにでも体を合わせたい、そう懇願した。しかし、柊は首を縦に振らなかった。柊の手のひらが汗のせいで頬に張り付く髪ごと琴葉の頬を包み込むと
「ダメだ」
と、琴葉に言う。抑えていた涙がポロリ、こめかみを通って落ちていく。どういう感情の涙なのかわからない。
柊が涙の跡をなぞるようにそこにキスをする。
柊はそのまま琴葉の腹部にもキスを落とし、その舌は徐々に下がっていく。
抵抗することもできず、どういうわけか”意地悪”な彼の愛撫を受け止める。
何度目の絶頂かわからなくなってそろそろ琴葉の体も限界に近づいてくるとようやく柊がぐっと琴葉の腰を引き寄せる。
シーツがずれて汗だくになった体を柊が抱きしめる。
「…あっ…柊、さんっ…や…ぁ、」
ぐっと柊が入ってくるのがわかると、背中が弓なりになりバチンと目の前が真っ白になる。柊に掴まる力もなくただ声を漏らした。絶頂のせいで苦しいのに柊はお構いなしに琴葉の唇を塞ぐ。
「琴葉、」
柊の声も余裕が無さそうに掠れている。
散々焦らされた体は何度も何度もびくびくと反応する。
焦点の合わない視線を彼に向けると
「好きだ」
と、言われる。
私も、と返したいのに声が出ない。琴葉の記憶はここで途切れていた。気づくと朝を迎えていた。
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