序章【手記の中の僕ら】

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幼い頃から書き続けている日記。 その手記は何度となく読み返したためボロボロだ。 なぜ、自分の書いた日記を何度も読み返すのかと言われれば、それは記憶が無いからである。 勘違いされたくないのだが、記憶喪失という訳ではない。 この体は特定してるだけで5人の人格が存在している。 しかし、体は1つであり、そこに存在出来る人格も1つである。 よって、自分以外が行動したところは把握出来ないのだ。 だから、「俺は」「僕は」「私は」「ウチは」「自分は」日記を読み返すのだ。 ページをめくる音と、現在の状況から俺は被っているニット帽を片手に引っこ抜いた。 「熱い訳だ」 砂漠のど真ん中でキャンプしていたのだから当然と言える。 灼熱の日差しが肌を焼く。 どうやら、俺がこの砂漠に至る事の経緯は他の四人に起因しているらしい。 ここからどうしろというのか……。 悩ましい所だが、そのために日記があるのだ。 汗すらも直ぐに蒸発する熱気の中で、汗をかきながらページを読み漁った。
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