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「昔は普通にいたわ、でも無理、苦手」
「え、何、お前も恋に悩んだりすんの?俺と榛名で話聞いてやろうか?」
「野良猫に相談する方がマシなレベルの二人でまじ萎える、死んで、つぅか悩んでねえわ昔の話だって言ってんだろ」
「昔の恋を引きずる俊平、絵になるよ?」
「まじで別れさすぞお前ら」
苛立たしげに煙草を噛む俊平を笑いながら俺も煙草の箱を振って、一本咥えた。
榛名から咎められないのをいいことに長年成功していた禁煙に今さら挫折した俺は、それでも特に気にしていなかった。
我慢は体に毒だ。
正直言って、もう色々懲りた。
「霧島の件に関しては樹も悪ぃわ」
「わかってるよ、俺が結局どっちつかずでずるずるした結果なのは」
「そう思うとお前らずるっずるのコンビだな」
「お前らって俺と誰のこと?」
「は?梢だろ?」
煙草を指に挟んだ俊平が呆れて言った。
俺はなんの話かわからずに軽く首を傾げながら煙を吐くと、賑やかな居酒屋の喧騒を搔い潜った俊平の声が耳に届く。
「だってアイツこそ、お前に四年も片思いこじらせてたじゃん」
夜道を歩く足が自然と早まった。
部屋に帰れば、榛名が待っているはずだ。
「あ、おかえり加瀬くん」
「榛名」
部屋のテーブルの前でテレビを見ていた榛名が顔を上げるので、俺はそのままキスをした。
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