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 ナナミさんと会ってから数日後、今日もお店の中は音楽とアロマの香りに包まれていた。川のせせらぎや鳥のさえずりの中にオルゴールのメロディが流れる。 「どうですか? この辺りとか気持ちがいいんじゃないでしょうか?」  こめかみの辺りを押すと、婦人の顔は一気にとろけた。目を細め、口元が上がる表情はまるで猫のようだった。  やがて、ツボを押していると施術時間が終わる。 「お客様、お時間になりましたよ」  婦人を軽く揺すると、ハッと目を覚まし起き上がった。 「あらやだ、恥ずかしいねぇ。でも、こんなに寝たのは久しぶり。とてもスッキリしたわ」  そう言われ自分の口元が緩む。重そうな身体は軽やかにベッドを下りた。婦人は会計を済ませると、振り返って言った。 「また来るわね」  ドアが閉まった瞬間、私はガッツポーズをした。 「ずいぶん調子良さそうじゃない」  後ろで見ていた先輩が声をかけてくる。 「はい、おかげさまで。むしろ有休いただいてしまって申し訳ないというか」  ばつが悪そうにする私に先輩は肩を叩いた。 「いいのよ。ちゃんと休むことできちんと仕事できるんだから、とても大事」  そう言って髪をほどき、先輩は私服に着替えた。今日は一層オシャレに決まっている。 「それじゃ、今日も店番お願いね」  そう言って扉を閉めた。ふと、窓を覗くと満月が輝いていた。その神々しい輝きは何かを予感させる。  ベッドの方へ戻って、後片付けをしていると扉の鈴が鳴る。 「はーい、お待たせしました」  受付に行くと、ナナミさんが立っていた。そして、今日は茶色い縞模様の猫を連れている。 「今日は友人を連れてきました。今回も前やっていただいたコースでお願いします」  ナナミさんがぺこりと頭を下げると、隣の猫も頭を下げた。慣れていないのか、足元が少しふらついている。2匹が頭を項垂れる微笑ましい姿に自然と私も表情が緩んだ。   おわり
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