自分たちに今できること

5/5
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
 再び聞こえた、鼻で笑う音。 「いいや、信じてるんじゃない。そういう女じゃないと知っているんだ。瑠璃は、犯罪者を殺すことに誇りを持つような女だからな。決して自分の欲望のために殺すことはしない」  ぶれることのないまっすぐな声に、東悟はため息をついた。 「おまえがそこまで言うなら……いいだろう」  表情も声も、険しいものに変わった。東悟は乱れた髪を、かきあげる。  意を決したように、喉元から声を絞り出した。 「西園寺に、言っておきたかったことがあるんだ」 「……なんだ?」 「瑠璃ちゃんの連絡を無視して、すまなかった」  哲は何も返事をしない。 「俺が何か連絡していたら、状況が変わっていたかもしれないと思うとな……」 「そんなこと俺に謝るくらいなら、頼んでいることをとっととやってくれ」  ぶつりと、電話が切れた。  東悟は刑事たちの顔を見渡す。それぞれが不安げにこちらを見つめていた。 「……よし。仕事だ」  ため息交じりに、けれども決意を固めた声で言う。その言葉に、刑事たち全員の顔が引き締まった
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!